<化学分析シリーズ Part9・水道水 その2>
株式会社エコニクス
環境事業部 試験分析チーム 宮下 幸
私たちは、水道水の水質に異常が無いか、水処理の運転が適切に行われているかを確認するため、水道水を作っている浄水場に行き水質検査を行っています。
たくさんある管理項目の中で、水素イオン濃度(pH)が厳しく管理されていることをご存じでしょうか。水道水をつくるうえで大切なゴミの除去とpHの関係についてご説明します。
水道水を作る水処理の方式にはいくつかの方法がありますが、私たちが担当させて頂いている浄水場では、河川水を水源とした急速濾過方式を採用しています。
水処理の工程を簡単に説明すると、まず葉、小枝などの比較的大きなゴミを網により取り除いた後、薬剤添加による凝集沈殿法により細かいゴミを大きな塊として除去するとともに、有機物などの色度成分を吸着させます。大きな塊は傾斜板付きの沈殿池で除去されますが、細かい塊は砂ろ過法により除去されます。この方法では、ゴミ、色度成分は除去されますが、細菌などの微生物は除去されないため塩素による消毒が行われます。こうしてきれいになった水は、配水池に送られ私たちの家庭へ供給されます。
急速濾過方式でpHと関わりがある部分は、小さいゴミを除去するために行われる「凝集沈殿法」の部分です。凝集沈殿を行うために、浄水場ではどのような処理を行っているのでしょうか。
【1.ゴミを集める!】
凝集沈殿を行うため、ポリ塩化アルミニウムという薬剤を添加しています。ポリ塩化アルミニウムは凝集力が強いため、素早くゴミを絡めながら凝集し大きな塊となります。
【2.ゴミを沈める!】
ポリ塩化アルミニウムを入れ大きな塊となったゴミをより速く沈降させるためには、pHを少し酸性にする必要があります。そこで、沈降に適切なpHの値になるよう硫酸を添加します。薬剤を添加した水をゆっくりと混ぜてゴミを更に大きく重くさせた後、傾斜板に沿って水を流し、大きくなったゴミを下に沈めます。
凝集沈殿を効率的に行うためには、pHを適正な値にコントロールする必要があります。原水の水質は一定ではないため、ポリ塩化アルミニウムの添加量も天候、季節により変える必要があります。また、消毒の目的で添加される塩素はアルカリ性であり、これも原水の水質に合わせ注入量が変化します。したがって、pHをコントロールするために添加する硫酸の量も非常にシビアに管理されています。さらに、pHが6.7を下回るとにがみを感じる場合もあり、pHの管理は重要になります。
こうしたなか、私たちは原水、処理過程の水、出来立ての浄水、配水池から家庭に供給される水など、多くの水のpHを監視しています。