地球環境シリーズ Part2
北海道大学大学院
工学研究科 COE研究員 奥西 武
黄砂は中国黄土地方の細かな砂じんが風に吹き上げられて運ばれ、徐々に降下する現象です。黄砂のもとになっているのは黄河流域のゴビ砂漠や黄土高原、タクラマカン砂漠一帯にある微細な砂が降り積もってできた地層、黄土層です。乾いた砂は、春になると、中国北西部に多発する低気圧の上昇気流によって500~2,000mの上空まで巻き上げられ、偏西風にのって約4,000km離れた日本にまで3、4日かけて飛んできます。近年、北海道でも大量の黄砂の飛来が確認されたことは記憶に新しいことだと思います。
黄砂の観測は、昔は目視観測のみでしたが、近年では1990年代後半に開発されたライダーとよばれる光を使ったレーダーで、粒子の高度や大きさ・形状を測定することができるようになったそうです。この計測機による観測により、黄砂の発生メカニズムが明らかになりつつあります。そして、レーダー観測により黄砂予報の精度も向上しつつあります。
さて、ここで少し、黄砂が飛来すると、どのような影響を及ぼす可能性があるかを紹介してみましょう。
<良い影響>
◆黄砂はアルカリ性の炭酸カルシウムが主成分です。そして、黄砂に酸性ガスが固着すれば,酸性雨は中和されます。日本にやってくる黄砂には国内の酸性雨の1、2割を中和する能力があると見られています。
◆黄砂にはリンやカルシウム、鉄などの無機養分が付着しています。黄砂が海に落ちると鉄分などの供給源となり、植物プランクトンが増え、海の生産性が向上する可能性があります。
<悪い影響>
◆黄砂が地表に落下し、微量の二酸性化硫黄が蓄積されていくと長期的に土壌を劣化させるともいわれています。
◆大量の黄砂の飛来は農作物を栽培するビニールハウスに砂が積もり、遮光障害となります。
黄砂の発生源の主な砂漠および黄土地帯