地球環境シリーズ Part1
北海道大学大学院
工学研究科 COE研究員 奥西 武
北海道沿岸を含む北西部北太平洋は、珪藻という植物プランクトンがたくさんいる海域で、海の色は皆さんお馴染みの深緑色をしています。一方、低緯度海域や大西洋海には円石藻という炭酸塩の殻を作る植物プランクトンがたくさんいることが知られています。
珪藻が増えるときCO2を吸収しますが、この円石藻が増えると、CO2が吸収されると同じだけCO2を放出するので、珪藻に比べ吸収能力が小さいと言われています。このため、円石藻が大増殖して珪藻類を減少させてしまうと温暖化が加速する恐れがあると指摘されています。また、円石藻が大増殖すると、磯の香りの成分として知られる硫化ジメチル(DMS)を多く発生させます。DMSは空気中に放出されて、まわりに水蒸気をつけ、雲をつくります。この雲が雨を降らせると酸性雨となり、森林を枯らすなど、大きな被害をもたらす恐れがあります。さらに雲によって温室効果(温暖化)を促進する可能性があることが指摘されています。
このような円石藻が大増殖すると海は白く濁るため、「白い悪魔」と呼ぶ人がいます。最近、東北太平洋沖で円石藻の大増殖があったのではないか?という報告がありました。もしかすると、遠い将来、北海道の海は白いと言われる時代がやって来たらと思うと怖い気がします。
単体では目には見えない植物プランクトンでさえ、地球規模の影響をおよぼす可能性があります。海の生態系を解析する一人として、様々な生物が周辺環境にどのような影響を与えているかを、最新の知見を踏まえ、皆様に情報提供できるように努めて行きたいと考えております。