大気環境シリーズ Part2
株式会社エコニクス
環境技術部 生活環境グループ 中山 英雄
一般に「排ガスの測定」というと排ガスの出口、つまり煙突の先端で行われると思われがちですが、通常は測定孔と呼ばれる煙突または燃焼施設から煙突をつなぐ排ガスの通り道(煙道)に設けられた穴からサンプリングを行います。窒素酸化物や硫黄酸化物などのガス状成分のサンプリングは測定孔に細いパイプを挿入し、そこからポンプなどで排ガスを引き出します。引き出した排ガスを吸収液と接触させ、目的の成分を液に溶かしてその液を後で分析するのです。一方、ダスト(ばいじん)の測定は煙道内を飛んでくるダストをろ紙を使って捕集するのですが、それがちょっと大変なのです。JIS規格によると「測定孔からダスト試料採取装置の吸引ノズルをダクト(煙道)内部に挿入し、排ガスの流速と等しい速度で吸引し…」と記されています。速度を一致させることにより、排ガスの流れを乱さないようにするのです。この排ガス流速と吸引速度を一致させることを「等速吸引」と呼びます。そして排ガスの測定で最も手間がかかるのがこの「等速吸引」なのです。これを行うためには排ガス流速を求めなければなりません。流速を求めるためには排ガスの温度、水分、組成、圧力、大気圧など最低でも約30にも及ぶ項目を測定し、これらの測定値から計算しなければならないのです。これらを測定するには多くの機材が必要で、運ぶだけでも大変な労力になります。当然、測定にも多くの時間と労力を要します。
しかし、苦労して得られた値がひとつひとつ数式に代入されていき、等速吸引の値が導き出された瞬間、何とも言いがたい達成感が得られ、苦労が報われた思いになるのです。