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エコニュースVol.220

2011年10月01日

<化学分析シリーズ Part7>

プロトプラストより抽出した遺伝子情報で偽ガゴメコンブを判定

株式会社エコニクス
技術開発部 試験分析チーム 塚本 友宏


マコンブのプロトプラストの写真

 プロトプラストとは、植物細胞の持つ細胞壁を酵素により分解し、周りの壁を取り去ってしまった細胞のことです。プロトプラストは細胞壁が無いため、少しの衝撃で破壊されてしまう位に弱い細胞ですが、遺伝子工学に利用しやすいという特性があります。
 その特性を利用した応用例の一つとして異種のプロトプラスト同士を融合して雑種細胞を作ることが可能です。例えば、トマトとジャガイモの雑種植物の“ポマト”、オレンジとカラタチの “オレタチ”もこの技術を応用して作られたものです。
また、他の応用方法として種苗生産への応用も期待されます。一つの個体からプロトプラストを作出してそれを完全な個体にまで培養させることができれば、有効な遺伝子特性を持つクローン個体を大量に生み出すことができるので、種苗生産に非常に有意義だと考えられます。
 そこで、今回はコンブのプロトプラスト作出技術の応用例の一つであります“遺伝子情報を用いたコンブの種属判定技術”をご紹介します。
昨今、ガゴメコンブの抗がん作用などが報告され付加価値の高い商品として注目されています。そのため、別の種類のコンブをガゴメコンブ(「偽ガゴメコンブ」)として売られるという話を聞くことが多くなりました。そのため、今まで目視で行われていたのとは異なるコンブ種属判定の技術が求められるようになり、その技術とはコンブの細胞から核酸(遺伝物質)を抽出し、ミトコンドリアDNA中の遺伝子配列を読み取り、その種属を判定するという方法です。

【プロトプラスト作出の必要性】
これまでコンブ等褐藻類の遺伝子に関する研究はあまり行われてきませんでした。それはなぜかというと褐藻類に多量に含まれる増粘多糖類(ネバネバ)が遺伝子の抽出操作を妨げるためです。しかし、これらネバネバを取り除きプロトプラスト(細胞)化することでコンブからも容易に核酸を抽出することが可能となります。


藻体から遊離したマコンブのプロトプラスト

【遺伝子情報を用いた種属判定方法の強み】
商品として市場に出回っているコンブは粉砕などの加工を受けており、見た目ではその種属を判別することは困難です。しかしながら、遺伝子情報を用いた種属判別方法では、たとえ粉々になったコンブでも少量あれば十分に種属の判別が可能であるという強みがあります。

 今回紹介したコンブの種属判別方法はプロトプラスト作出技術の応用のほんの一例ですが、この技術は様々な分野に応用が期待できます。将来的にはプロトプラストを藻場の再生に役立てることやコンブを大量養殖して有用物質を生成するなど、もっともっといろいろな面で活用できる技術として注目ですね。

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