<海の生物シリーズ Part19・タマキビガイ>
株式会社エコニクス
環境事業部 泊担当チーム 井口 高嶺
磯には様々な魚類・貝類・海藻類が生息しています。磯には潮間帯と潮上帯というものがありますが、皆様はご存知でしょうか?
まず、潮間帯と潮上帯について説明いたします。
1年のうち、満潮でも1回しか海水につからないような高いところ(最満潮線)から、干潮で1回だけ干上がる低いところ(最干潮線)までを潮間帯と呼び、潮の干満の状態から上部潮間帯、中部潮間帯、下部潮間帯の3つに分けられています。
また潮間帯より高く、海水が波しぶきとしてかかる程度の範囲を潮上帯と呼びます。
潮間帯と潮上帯で生息する生物は冬の寒さや夏の強い日射とはげしい乾燥、時には激しい豪雨にも耐えながら生活しています。
タマキビガイは、沖縄を除く日本全域に分布し、この過酷な潮上帯を主な生活の場としているたくましい巻貝で、港や磯などで頻繁に見ることが出来ます。殻の大きさ(殻径)は10mm程度、色は岩礁の色と同化しており、殻表に3本の筋(螺肋)が見えるのが特徴です。
タマキビガイはなぜあえて過酷な環境の潮上帯を好むのでしょうか?なぜそのような場所で生きていけるのでしょうか?不思議に思えませんか?そこには、タマキビガイならではの生存戦略が隠されていたのです。
タマキビガイは海水がなくなって乾燥する干潮時には、体内の水分減少を防ぐために殻のふたを閉じ、体内から分泌した粘液で隙間を無くしています。隙間を無くした際に一定量の海水も一緒に閉じ込め、外部からの真水と風の進入を防ぐことで乾燥から身を守っています。そして満潮になり岩面が波しぶきで濡れたり、夜露で湿ってくると行動を始め、岩面に生育している非常に小さい海藻類を歯舌で削りとって食べます。潮上帯には肉食の海生生物は追って来ることができないので、タマキビガイは温度と乾燥に抵抗力をつける戦略をとったと考えられています。
このように、一目では理解できないような些細な行動であっても、その種が存続する為の工夫が成されていることがわかります。皆様、陸上でタマキビガイの群れを見かけた際は、是非そっと見守ってあげて下さい。