湿原シリーズ Part5・自然再生型公共事業 その2
株式会社エコニクス
技術顧問 辻井 達一
自然再生を公共事業化するのは看板の掛け替えではないか、という意見もあります。小型のものはともかく、自然再生となれば時間もかかるしスケールも大きく取らなければならないため、地方の小さな自治体などでは手に余ってしまうのです。むしろ自然再生こそ公共事業で行うべきです。そもそもそれを必要としたのは多くは公共事業の結果だからです。
習志野市の谷津干潟
変えなければならないのは計画段階からの生物学的なデータ収集とその評価、そして試行と効果の検証です。検証の結果はもちろん計画の修正に繋がらなければいけません。
釧路湿原では1999年から計画が検討されてきて、2003年度からいよいよ実施に向けて動き出そうとしています。その一つは、一旦、直線化した河川を再び古川を使って流して湿原への負荷を小さくしようというものです。古川には今やそれなりの生態系が成立していますから、それへの配慮も必要ですが、目的は飽くまで農地への影響は与えない前提で湿原への負荷を落とすことにあります。かつては湿原への負荷はほとんど計算されていなかったのですから今や、それを修整することになった、と考えるべきです。
習志野市の谷津干潟は、高層団地と高速道路に取り囲まれた箱庭的なものですが、偶然とは言え、海水の出入りが確保された結果、有数でしかも特異な水鳥の観察地となりました。言って見ればバードウオッチングのできる贅沢きわまる住宅地の形成です。こうしたものも含めて自然の確保と修復が進められることを期待したいと思います。