海鳥シリーズ Part1・海鳥と私たち その1
環境省 北海道海鳥センター
研究員 小野 宏治
およそ9,000種類の鳥類のうち、海鳥と呼ばれる鳥たちはたった300種、3%にしか過ぎません。鳥たちは陸上で進化し、やがて広大な海へと進出していきました。人類が現れるはるか以前から彼らは海を利用し、さまざまな形で適応していったのです。
地球の表面積の七割を占める海は、長い間未知の領域として人類の進出を拒み、その多様性を保ち続けてきました。人々は浜辺で貝や海藻を採集したり、小型船で自分たちの食べる分をとってくるしかなかったのです。そして、海鳥から魚群の場所を教えられて漁をおこない、ときには海鳥の骨や羽毛を生活の道具や衣類として活用してきました。
しかし、大型船が建造されて自由な航海が可能になり、海洋油田をはじめとする資源開発がおこなわれるなど、海鳥と人類との接点は日を追うごとに増大しています。同時に、海鳥にとっていままで予期しなかったことがつぎつぎにおき、海鳥の未来は確実に奪われつつあるようにみえます。
海鳥と私たちとのつながりをシリーズでお伝えします。
♪海猫(ゴメ)が鳴くからニシンが来ると 赤い筒袖(つっぽ)のヤン衆がさわぐ♪ ではじまる石狩挽歌のように、海鳥は魚群をいち早く察知して集団採食することがよくあります。古来、人々はこれを「鳥つき漁場」「鳥山」などと称し、海鳥の集結状態や行動によって漁場を判断しました。 つまり、漁師は海鳥ウォッチャーだったわけです。
漁獲統計は、対象とする魚種やサイズしか資料に表れないという欠点があります。
そのため、肉眼で容易に観察し調べることのできる高次捕食者として、海洋環境のモニターとしての海鳥が有望視され、おもに国外で積極的に研究されています。
油汚染などの事故時には、海鳥の被害推定をおこなって平常時の状態と比較することで海洋生態系に与えたダメージを知ることもできます。国内では北海道が海鳥研究の先進地ですが、海岸や海洋の保全に対して海鳥をさらに活用していく取り組みが望まれます。